ワイン用ハイブリッド品種『マルケット(Marquette)』とは?
みなさま、マルケットというブドウ品種はご存じでしょうか?
先日、JVAが山梨で実施したセミナーで、「マルケット」という品種から造られたワインを試飲でお出ししました。
セミナーの趣旨は「ウイルスや病害管理について」でしたが、病害管理の側面でも「適切な品種の選択」は非常に重要であるという話が荷田先生からも出ておりました。
その適切な品種の候補として「ワイン用ブドウのハイブリッド品種」に関する情報ニーズは日に日に高まっていると感じます。
そのような背景も踏まえて、
本記事では、2024年にJVAでも苗を輸入する「マルケット」という品種について取り上げていきたいと思います。
そもそもマルケットとは?
マルケットはWine Grapesによると"Promising, increasingly popular, cold-hardy complex American hybrid."、つまり「耐寒性が強く、複雑性があり、人気が高まりつつある有望なアメリカのハイブリッド品種」であるとされている。
もう少しこの品種を紐解いてみると以下のような情報が確認できる。
・2006年にミネソタ大学によって導入
・耐病性のある黒ブドウ品種
・ミディアムボディの辛口赤ワインを産出
・オーク樽での長期熟成にも適する
ここからは上記ミネソタ大学のファクト資料をベースに品種特性をお伝えしようと思う。
マルケットの品種特性
トップノート、口中いずれにもサクランボ、ベリー、黒胡椒、スパイスの複雑な香りを持つ。ワインには、果実味に加えて「土っぽい」アロマがあると評される。
マルケットの栽培特性
・概要
房は中程度(113g/房)、適度なバラ房で濃い色調。
節間は平均7.5~13cm。冬のダメージにより、"ブラインド・ウッド "と呼ばれる部分ができることがあるが、コルドンを下に向けることで修復できる。
目標収量は、1 エーカーあたり 3-4 トン :1 株あたり44-58 房、11-14.5 ポンド
※1 ヘクタールあたり 7.5-10 トン:1 株あたり44-58 房、5-6.5 kg
休眠期の剪定と摘心を適切に行えば、房の間引きは必要ない。
・収穫のタイミングとパラメーター
収穫はミネソタでは9月下旬に行われる。
収穫時の糖度レベルは22~26°Brix。pHは2.9~3.3が理想的。滴定酸度は11~12g/Lを目指す。
・土壌適性
水はけのよい土壌で最もよく育つ。多くの品種と同様に、水はけの悪い土壌には耐性がない。
・栽培方式
開放的かつ半直立性で生育する。高めにワイヤーを設置する手法(Single High Wier:SHW)でもVSPでもうまく栽培できるため、栽培方式は各栽培者の考え方によって異なる。
1.8-2 m程度の畝間隔で植えることができる。砂質土壌の場合は間隔を密にし、重い土壌の場合は間隔を広くとる。
・樹勢
樹勢は中庸からやや強め。土壌が豊かだと樹勢は強くなるため、キャノピー・マネジメントにより過剰な成長を抑制する必要がある。
・剪定とキャノピーマネジメント
短梢剪定は、短梢の芽数は3-4 芽で、1本のブドウ樹あたりの芽数は最大60 芽までとする。休眠期の剪定では、冬芽の傷み具合にもよるが、2-4 芽を残し、その後、1 本あたり2 芽まで間引く。
フルーツゾーンの除葉と摘心により、生長と生殖のバランスのとれた生育を促し、果実を日光に当てて成熟を促進することができる。
・耐寒性
マルケットはミネソタの冬に耐えるように育成された。
-34 ℃程度まで耐えるとされているが、極端に冷え込むと、蕾が枯れたり、コルドンが枯れたりする。
また、萌芽が比較的早く、春の終わりの遅霜のリスクがある。
・病害虫耐性
黒腐病、灰色かび病、べと病、うどんこ病に中程度の耐性があることで知られている。
フィロキセラには弱い。
2024年にJVAとしてマルケットの苗をアメリカから輸入します。
正式にみなさまの手元に届くのは28年以降になるかとは思いますが、健全で品質の高い苗を提供できるように進めていきますので、ぜひお待ちいただければと思います。
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